リビングひろしま2013年1月7日号(電子新聞)広島で約20万部発行の地域生活情報紙
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2013年1月7日(月)〈4〉育児休暇を取得され、積極的に育児に参加されている知事は、同じ子育て世代から見ると、理想の夫像です。夫の役割について、どのようにお考えですか。 これからの時代、女性がもっと社会参画していくことが重要になってきます。そのためには社会全体で子育てをサポートしていかなければいけません。当然保育所などの充実も必要ですが、お母さんにとって、社会の中でまず一番身近というと〝夫〞なんですね。そこがサポートしないで、何で社会が…ということに。 今は身近に祖父母などが居てサポートしてくれる時代ではありませんから、特に子どもが小さい頃は非常に孤立しやすいし、精神的にも追い詰められやすい。そういうときに助けられるのは夫しかいません。 時々育児から解放してあげるとか、話を聞くだけでもいい。僕も最初、その辺がよく理解できなかったんですが、あるとき話を聞くだけでも全然違うんだなと感じることがありまして、そういうところも大事だなと。家事もされますか? 何でもしますよ。掃除、洗濯、時にはご飯を作ることもあります。広島県が支給している「いきいきパパの育休奨励金」の申請は、毎年度約50件に達しており、育児休業を取得する男性が徐々に増えているようですが。 数字で見ると、男性の育児休業取得率は、平成22年は1・2%だったのが、23年には4・6%まで上がって、劇的に増えています。 男性が育児休業を取得し、奨励金をもらっている企業では、互いが協力することで、職場のチームワークや生産性が向上したり、取得した本人も会社に対するロイヤリティー(信頼度)が上がっていると。育児休業は会社のマイナスになるのではなく、むしろプラスになるということです。 4年前、僕が広島に戻ってきたとき、最初に感じたのは、公園に行ってもパパがいないなと。それが、先日も子どもを連れて2時間くらい近所の公園に行ったんですが、その間に5、6組の親子が来て、そのとき連れて来ていた親が全部パパ。しかもパパオンリーなんです。育児休業を取っているかは別として、子育てにパパが関わる度合いというのは、明らかに増えているなと感じます。それだけ男性の意識が変わってきたということでしょうか。 そうだと思います。男性の育児に携わる時間というのが、広島では平成18年には1日平均19分だったのが、何と23年には53分に激増しています。都道府県の順位でも47位から6位に浮上。目に見える変化が出ています。知事室の机の上には、お子さん3人の写真やお子さんが描いた絵が。「携帯電話の中の写真はほとんどが子ども。時々見たくなりますね」と優しいパパの顔で話す湯﨑知事世界に誇れるまちづくりの柱の一つに「ワーク・ライフ・バランスのまち」を掲げられていますが、どういったものですか。 簡単に言うと、仕事と生活の調和。それは単に一日の中だけでなく、人生のさまざまなステージで仕事と生活を調和させて、生き生きと暮らすことのできる状態です。そう願っても、会社や夫など周囲の理解がないと実現できないのが現状です。市ではどのような支援をしていますか。 実現するには、「男は仕事、女は家庭」といった固定観念をなくし、みんなの意識を変えることが大切です。そのために広島市では、仕事と家庭・子育てとの両立支援、男女共に能力が発揮できる工夫をしている会社を毎年公募・選考し、「男女共同参画推進事業所」として表彰しています。いいものを見つけ出し、そのノウハウを広めることが重要だと思います。また支援としては、そのような職場づくりを目指す事業所に講師を派遣できる仕組みにしています。平成23年度は待機児童解消に向け、保育園を増やすなど広島市で1053人の定員増を実現しましたが、まだ足りない地域もあります。 私立保育園の新設や私立幼稚園の認定こども園化を進め、平成24年度はさらに474人の定員増を行い、平成27年度には待機児童ゼロを目指しています。また、安佐南区や西区に待機児童が集中していることや、約8割の待機児童が3歳未満であることも踏まえ、効果的な整備に努めます。今までの保育園・幼稚園とは違う、第3の道はお考えですか。 今までの保育システムは、男が中心で働く家庭を基本としながら、例外的で数が少ない共働き家庭を助けるために保育園を設置していました。今は共働き家庭が増え、モデルが合わなくなっています。そこで国が「子ども・子育て支援新制度」を立ち上げ、平成27年度の実現に向けて動き始めました。しかし本格始動するまで皆さん待っていられませんから、広島市ではそれへの対応を考えながら今できることを工夫して進めています。―私のママ友が「ファミリー・サポート会員」となって自宅で保育をしているのですが、それも取り組みの一つですか。 そうです。保護者の買い物や残業の際に、会員の自宅で子どもを預かるのが「ファミリー・サポート・センター事業」。保育園に入園していない乳幼児の保護者がリフレッシュしたいときや病気の際に保育園で子どもを預かる「一時預かり事業」も行っています。 また親子で交流できる「常設オープンスペース」を各区に1カ所設置。平成24年度からはNPO法人などが運営するオープンスペースに対する補助制度を創設し、10月には安佐南区・安佐北区に1カ所ずつ開設しました。小学生になると、保育園の延長保育や会社での時短もなくなり、働くことを諦める女性も多いと聞きます。学童保育についてはどのようにお考えですか。 日本では〝子どもが自立して通学できるように育った〞とみなした上で、6歳から義務教育が始まります。それは家庭で子どもを見守れるというモデルで成り立っていましたが、今は共働きが増え、実態が変わっています。 広島市では、午後5時まで保護者が家庭に居ない小1〜3年の児童を対象に「留守家庭子ども会事業」を児童館内で展開しています。児童館のない小学校区にも学校の余裕教室などを使って、現在133小学校区中、163クラスを設置。今後は、小6まで利用できる仕組みづくりや、パートタイムなど働き方の多様化にも対応していく必要があると考えています。 こうした現状を踏まえ、女性が一層活躍できる社会のためにも、仕事と子育て・介護の両立支援などトータルの意味でワーク・ライフ・バランスの実現を目指します。共働きが増え、古いモデルが崩壊働き方の多様化に対応趣味の絵画の話になると、〝オフ〟の笑顔にスイッチ。市長室には、市長の描いた油絵が4枚も飾られているそう。写真の絵は、在英国日本大使館時代にフランスへ訪れ、モネの家を描いた作品広島の〝子育て〞、今後どうなるの?行政の長にママライターが聞きました女性の就業率の回復を支援保育所の整備も進めています本年度は仕事と子育てを両立できる環境づくりのために約43億円の予算が取られていますが、具体的な成果は? 平成22〜23年度に、いろいろな場所でバリアフリーを進めました。本年度も保育所の整備や多様な保育、例えば病児保育や休日保育などへの対応を進めています。子育てサポートステーション、ママの復職支援など、多岐に渡っていますが、最終的には女性の就業率の回復につながっていけるような体制作りを進めています。保育所の数も増え、待機児童は広島県全体で見れば少なくなっているようですが、広島市では依然多く、地域で差があるようですが…。 保育所の数というよりも、定員が大きく拡大しています。待機児童は、広島市以外では一応なくなりました。広島市で一番整備を進めているのですが、それでも要望が上回っている状態。もう少しフレキシブルに保育できるような環境を整える必要もあると思います。保育所世代より、小学校に入ってからのほうが働きづらいという声もよく耳にします。 県内では全小学校区の95%で児童クラブか子ども教室が整備されていますので、対応は進んできているのかなと思います。今後も女性の働きやすさに焦点を絞った取り組みを進めていきます。社会全体で子育てを支えていくことが必要パパの育児に携わる時間が広島県で激増 「子育てしやすい世の中に―」そんなスローガンをよく見かけるけど、実際に広島ではどうなっているのか…。広島県・広島市の行政の長に、子育て施策について直撃取材。実際に父親でもある、おふたりのプライベートな一面にも迫りました。誰もが生き生きと暮らせる社会を目指して「ワーク・ライフ・バランスのまち」の実現を!広島市長松井一かずみ實プロフィル1953年生まれ、広島市東区出身。京都大学法学部卒業後、旧労働省に入省。1989年に在英国日本大使館一等書記官、労働省婦人局婦人労働課長、厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当)、中央労働委員会事務局長などを歴任。2011年厚生労働省を退職、同年4月広島市長に就任。3女1男の父プロフィル1965年生まれ、広島市佐伯区出身。1990年に東京大学法学部を卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省。2000年に退官後、ネットベンチャー「アッカ・ネットワークス」を設立。2008年に退任し、2009年11月に広島県知事に就任。2男1女の父広島県知事湯﨑英彦

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