リビングひろしま2016年3月19日号(電子新聞)広島で約20万部発行の地域生活情報紙
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〈5〉2016年3月19日(土) 私たちにとって未知の世界である地下深部。岐阜県にある「瑞浪(みずなみ)超深地層研究所」では、いわゆる核のゴミである“高レベル放射性廃棄物”を、高い安全性で処分するために必要な研究が、地下深くで行われています。今回、スポーツキャスターの益子直美さんが同研究所を訪れ、地下300mの世界を見学してきました。山に降ったものと推定しています」との解説に「マンモスのいた時代から今までで、わずか数㎞しか水が移動していないとは。地下深部の水の動きはずいぶん遅いんですね」と益子さんは驚いた様子でした。ん。「日本の処分計画は?」と質問しました。「まずは候補地の選定からなのですが、火山や活断層の影響が小さい安定した地層に建設する必要があります」と大澤さん。今年、最終処分地として科学的な観点から適性がある地域が国から示される予定です。「高レベル放射性廃棄物は、今まで一人ひとりが電気を使ってきた結果のもの。だからこそ、次の世代に先送りせず、私たちの世代で処分への道筋をつけなくては」と大澤さん。その言葉に、益子さんも「電気に支えられて成り立っている私たちの暮らし。電気を上手に使うことだけでなく、電気を使った後のことについても知り、考えることが大切なんですね」とうなずいていました。「地震が来たらどうなるのですか?」との益子さんの問いには、「地下深部の揺れは地表に比べて小さくて、2分の1か「電気に支えられて成り立つ暮らし。電気を使った 後のことについても知り、考えることが大切ですね」今年、最終処分の科学的有望地を国が提示予定最終処分地の決定は私たちの世代で道筋を地下深くの岩石や地下水はどうなっているの?地下300mと500mで、ち密に研究地下の環境は、変化が少なく安定まず候補地の選定これからの議論が大切取材協力/電気事業連合会http://www.fepc.or.jp/地上に展示されている、500m地点から掘り出された花崗岩。今から行く地下世界に思いを馳せます放射性物質を水に溶けにくいガラス構造に取り込み、水を通しにくい鉄と粘土で覆う3重の「人工バリア」と、地層が持つ「天然バリア」で、長期にわたり物質の動きを閉じ込めます岐阜県にある「東濃地科学センター瑞浪超深地層研究所」は、高レベル放射性廃棄物の「地層処分」に関する調査・研究のために作られた施設。実際に地下を掘り進めて、岩盤の状態や地下水の動き、また掘削が地下環境に与える影響などを研究しています。「この施設には地下300mと500mにそれぞれ水平の研究坑道があり、今日は300mを見学します」と同センターの大澤英昭さん。「どんな所なんだろう」と益子さんは少し緊張した面持「この研究の目的である〝高レベル放射性廃棄物の地層処分〞とは、そもそもどういうことなのでしょう?」と益子さん。「日本は40年以上前から原子力発電を利用してきましたが、使い終わった燃料をリサイクルするときに、最終的なゴミである〝高レベル放射性廃棄物〞が発生します。その処分方法として、海洋底処分や宇宙処分などを検討した結果、地層が本来持つ『物質を閉じ込める』性質を利用した〝地層処分〞が最も現実的で安全性が高い、となりました」と大澤さん。「地層処分は世界共通なんですか?」との益子さんの問いには、「世界の共通認識で、その技術自体は既に確立されています。日本では、地下300mより深い所に埋めて処分することが決められているんですよ」と教えてくれました。ち。工事用のエレベーターに乗り込み、約3分で地下300mに到着。すると「うわぁ暖かい」と益子さん。地下では季節を問わず、気温20℃前後の安定した環境が保たれています。さっそく研究坑道を進んで行くと、花崗岩がむき出しになった場所が現れました。「岩盤の割れ目の状態や地下水の流れを調査しています。割れ目から出ている水は、約1万年前に降った雨水。コンピューターで解析した結果、7〜8㎞離れた現在、最終処分地が決定しているのはフィンランドとスウェーデンの2国のみと聞いた益子さ地下300mの研究施設へ潜入!そこには思ってもみない世界が!?スポーツキャスターの益子直美さんが「瑞浪超深地層研究所」を見学しました地下300mの研究坑道に降り立った益子直美さん。横幅4m、高さ3mの大きな空間が目の前に。元バレーボール日本代表選手の益子さんは、「私がジャンプしても余裕です!(笑) 地下にこれほど大きな坑道を掘って研究していることに驚きました」立坑は、1.3mずつ掘り進めてはコンクリートで固め、平成26年に地下500m地点の坑道掘削を終了。人や荷物の移動は、この巨大な巻き上げ機を活用しますつなぎ服やヘルメットなどを身につけ、エレベーターで地下へ。「この立坑が地下500mまでつながっているんですね。のぞき込むとドキドキします」(益子さん)色素を流し、物質が移動する様子を調査。「坑道内には計器が随所に。データをとても細かく測定していることが分かります」(益子さん)研究坑道からさらに横へボーリング調査を実施。「トンネルの奥の水圧や水質をチェックできるんですよ」(大澤さん)花崗岩の割れ目から地下水がチョロチョロと流れていい水ます。触ってみた益子さんは「温かい!」とビックリ。「水水「水温は大体23℃くらいで一定しています」(大澤さん)ん)1966年東京都葛飾区生まれ。バレーボール選手として中学・高校で全国区となり、卒業後はイトーヨーカドーへ入社。高校時代から日本代表チームに入り、世界選手権やワールドカップに出場。現役引退後は、スポーツキャスターやタレントとして、テレビや雑誌、講演を中心に活躍中東濃地科学センター 地層科学研究部 部長大澤英昭さんNews勉強室ミセスのら3分の1程度。周囲の岩盤と一体となって揺れるため、実は地震の影響はほとんどないんですよ」と大澤さん。「地下のほうが揺れが大きいのかなと思っていました。温度もそうですが、地下の印象がかなり変わりましたね」と益子さん。「何万年も前の地下水だったり、岩盤だったり。地上と地下では時間の流れ方が違う感じ。地層処分を高い安全性で実施するため、地下深くで、自然相手に多角的な研究を重ねていることがよく分かりました」■地層処分の仕組みスポーツキャスター 益子直美さん地下300mの研究坑道見学スナップいざ、出発! この研究は平成8年にスタート。地表からの地質調査や、地下500mまでの掘削による研究を経て、現在は、地下深くの岩石や地下水がどのように変化するのかを調査しています。

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