子育て親育ち リビングひろしま(電子新聞)広島で約20万部発行の地域生活情報紙
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〈11〉子育て親育ち『vol.10』(「リビングひろしま」2011年11月19日号12面掲載)上野資料(上の4コママンガ)を見てください。約束の時間を過ぎて帰ってきた子ども。親は「何時だと思ってるの?ご飯が冷めちゃったわよ」と、カーッとなって怒りました。こんなことありますか。石本待ってる時間って長いんですよね。だからどうしてもイライラして、それを子どもにぶつけて怒ってしまいます。森川遅れて帰ってくるには、何か理由があるんでしょうけれど、普段通りの顔で楽しそうに帰ってくることに腹を立ててしまいますね。上野マンガのお母さんは「ご飯が冷めちゃったわよ」って言っていますが、これって、子どもにとって重要なこと?石本これは、怒るところがずれていますね。最初に怒りたかったのは約束の時間からかなり遅れて帰ってきたということなので、叱るならそこだと思うのですが…。上野そうですよね。これだけみると親の都合を子どもに押しつけているような感じがします。私たちも、そんなことってありますよね。森川親の都合ばかりではなく、親は先のことが読めるので、それを指摘すると、子どもは機嫌が悪くなります。親は、こんなに子どものことを思っているのに、気持ちがすれ違うんですよね。上野親は子どもの気持ちが分からない、子どもも親の気持ちが分からない。今日はここがポイントですね。先ほどのマンガですが、3コマ目の吹き出し部分を考えてみてください。石本「そんな怒り方をしなくてもいいのに。こっちにだって理由があるのに_」かな。森川「いきなり怒らなくてもいいじゃん」とか、「理由ぐらい聞いてよ」ですかね。上野ここで大事なことは、「心配していたのよ。話を聞かせて」と親の気持ちを伝えること。きっと理由があったのでしょう。子どもを信じる気持ちがあると、いきなり怒ってしまうことも少なくなるでしょう。ではこのマンガのように、親子の気持ちがすれ違うことってありますか。森川中学生になると、親と話をする機会が減ってきます。親が聞きたいな、聞いてみたいなと思うことに対して、期待するような答えが子どもから返ってこないと、ますます聞き返してしまいます。そういう私の気持ちと、子どもの気持ちが合わないことが最近多いと感じています。上野親が全てを知る必要はないと思います。チャイルドラインにかかってくる電話の内容で、子どもと親との気持ちのすれ違いで、一番多いのが進路の問題(ほかの相談例は下の囲みを参照)。子どもは、自分の人生は自分で考えたいと思っています。子どもは、親が自分の気持ちを分かってくれないと私たちに訴えてくるんです。おそらく親子で話はされているのでしょうが、親が考えることが、子どもにとって良いこととはいえないケースもありますね。上野「あなたの話を聴くよ」「お母さんはあなたを信頼してる。お母さんに話を聞かせて」という気持ちを子どもにどう伝えるかを考えてみましょう。石本私は息子から「俺の話を聴いてくれ。途中で母さんが絶対口を挟んでくるから、言いたいことが全部言えない。とりあえず聴いてくれ」と言われました。森川子どもを信じているのですが、心配する気持ちの方が強くて、つい先手を打ってみたり、一言挟んだりしてしまいます。上野まずは丁寧に話を聴くことです。子どもは、自分の気持ちがなかなかうまく言い表わせません。時間をかけて話を聴くことです。森川言いたいことをぐっとこらえ、子どもの話を聴くべきだということは分かっているのですが、それがなかなかできないんです。石本私、最近ちょっと落ち着いたんですよ。私の母から、「子どもの全てを知らなくてもいいんじゃない」と言われました。ちょっとした秘密があっても、それはそれでいいと…。全部を知ろうとするから、お互いにしんどいと分かって、少し楽になりました。上野だって私たちも子どものころ、親に言わないことっていっぱいあったじゃないですか。特に思春期になると、本当に言えないことや悩んでしまうことが増えてくるものです。親も子どもの時があったわけですから、親とすれ違ったことをちょっと思い出してみると、わが子の気持ちが理解できるかも。森川今日、上野さんに一番聞いてみたいのは、聴き方のポイントです。チャイルドラインの電話相談で子どもたちの悩みを聞いていらっしゃるので、いろいろな対処法をご存知かと思うのですがいかがですか。上野私たちチャイルドラインは、基本的に〝傾聴〞なんです。アドバイスはしません。子どもの持っている力を信じて、子どもが悩みを話すことによって気付いていくという力を信じて話を聴くようにしています。あくまでも答えは子どもが出すというスタンスです。それが自立にもつながります(左囲み内「聴き方のポイント」を参照)。石本「聞き上手は話し上手」といわれますが、子どもの自立を促すためには、どういう言葉がけをしたらいいのでしょうか。上野基本は、子どもをありのままに受け止めること。子どもが言った言葉以外、基本的に私たちは使いません。ですから、子どもが言った言葉を繰り返します。そうすることで、「私が言ったことを聴いてくれている」ということが伝わり、それが安心感になります。いきなり「あんた、ダメじゃないの!」と言ってしまうと、子どもは電話を切ってしまいますから…。それと、子どもの話は、共感して聴くということを心掛けています。共感と同情とは違うので注意です。森川共感も同情も、何だか一緒のような気がしますが、何が違うのでしょうか。上野悩んだり、苦しんでいる子どもがいたら、「あなたを一人で放っておいたりしないからね」という姿勢で、そっとそばにいて一緒に考え、「大丈夫だよ」って言ってやること。それが共感です。その時、先回りして大人が答えを出さないこと。あくまでも決断は子どもです。もし次に何か悩みがあった時、「お母さんだったら一緒に考えてくれる」という気持ちを抱かせることが大切です。「子育て親育ち」座談会【小学高学年~中学生編】親の言うことをなぜ聞かない?子どものことは何でも知っていると思っていたのに、中学生になると知らないことが増えてきます。親としては心配のあまりあれこれと言いますが、子どもは反抗するばかり。「子どもが言うことを聞かない」と嘆く前に、子どもがなぜ聞こうとしないのかを考えましょう。今回は、上の4コママンガからスタート。各家庭でよくあるケースですが…Vol.10【上】石本智香子さん(46歳、府中町在住)長男14歳・中3、次男12歳・中1。【下】森川陽子さん(40歳、府中町在住)長男12歳・中1、長女10歳・小5。二人とも、若竹保育園子育て支援センタースタッフで、府中町学校支援コーディネーターとして活躍中▲座談会の進行役を務める上野和子さん(60歳)。3人の子どもはすでに成人。子ども専用電話「ひろしまチャイルドライン」を運営するNPO法人ひろしまチャイルドライン子どもステーションの理事長上野「聴く」という字を見てください。耳へんに〝十四の心〟と書きます。〝十四の心〟は、人それぞれで違っていても、また14にこだわらなくても結構です。「子どもが安心して話せるために心掛けること」ということで考えましょう。以下は「ひろしまチャイルドライン」で心掛けている話の聴き方です。参考にしてください。①「子どもの話を聴こう!」と心に決めましょう 子どもの話を聴こうと意識してください。意識しないと話は聴けません。忙しくしている時に「お母さん、あのね…」と子どもが言ってきた時、「忙しいから後で」と言ったら、もう子どもは話しません。ちょっと手を休め、子どもの顔を見て「今、忙しいから○分待ってくれる?必ず聴くからね」と、ひとこと言ってください。②子どもの話をありのままに受け止めましょう 子どもの話を聴くことに徹しましょう。評価しない、同情しない、教えないこと。「つらかった」「苦しんだ」という気持ちを引き出すということが大事です。「こうすればよかった」「ああすればよかった」というようなことは、話をしっかり聴く前にこちらからは言わない。先回りしたら、子どもは言うことがなくなっちゃいます。③話をしている途中で口を挟まない 聞き手が、つい「そうそう、分かる分かる」と言いがちですが、ここでは何で悩んでいるのか、何を話したいのか、まだ分からないはずです。「分かる分かる」をぐっとこらえて、「そう、あなたは○○が嫌いなの? それってどういうこと。少し話してくれる?」と話を続けてください。子どもが自分のことをしっかり話した後に、「そういうことだったの。じゃ、お母さんはあなたの話を聴いて思ったことを言ってもいい?」ということで話し始めましょう。ここからは、親の気持ちを子どもにも聴いてもらっていいでしょう。例えば、「心配してたのよ。その気持ち分かってもらえるかしら。大事な子どもだから、何かあったら困るじゃない」など。親の気持ちは、まずは子どもの話を聴いてからというのが鉄則です。編集部それでは、今日の座談会の感想をお聞かせください。石本私は、子どもが何かを言ってきたら、なるべく聴くようにしていたつもりです。しかし今日の座談会で、「お母さんが決定してはいけない。答えは子どもが出すもの」と言われ、思わず「ん?」と、考えてしましました。ここは反省だなと感じました。子どもの力を信じることが大切なんですね。親が勝手に判断を下すのではなく、共に考え、決定は子どもにさせることで、自立していけるよう、そっと寄り添いたいと思いました。森川今日、上野さんがおっしゃったことは、今の私にストレートに響く言葉ばかりでした。〝十四の心〞を意識して、口を挟まず、否定せず、同情せず、ただひたすら話を聴くことを心掛けます。子どもを信頼して見守りたいと思いました。上野「なぜ子どもは、親の言うことを聞かないのか」と思っている方がたくさんいらっしゃると思います。結局は、親自身が子どもの話を聴いていない場合がほとんどです。少しずつでも〝傾聴〞を心掛けていただければと思います。「お母さんに話してよかった」と安心感が得られれば、もし、トラブルに巻き込まれたり、大きな問題に直面したときも、親子で話し合いながら乗り越えていけるはずです。座談会を終えて…次回の「子育て親育ち」座談会は11月下旬~12月上旬の予定 テーマは、思春期の性について(仮題)。日時は調整中です。座談会実施の1週間前に、ウェブサイト「LICOひろしま」の子育て親育ちコーナーでお知らせします。乞うご期待ください!LICO 子育て親育ち検索チャイルドラインが教えてくれる聴き方のポイント 今日は17時30分に帰る約束をしていましたが、帰ってきたのは19時でした。最近あまり話をしてくれなくなったので心配でしょうがありませんただいまー 遅くなっちゃった  あのね…何時だと思ってるのごはんが冷めちゃったわよ!どこ行くの?晩ごはん待ってたのにいらない! このたび実施した座談会は、11月2日にバルコムユーストリームスタジオ(西区大芝)の協力の下、ユーストリームを使って放映しました。ウェブサイト「LICOひろしま」内にある「子育て親育ち」のバナーをクリックすると、過去の座談会もご覧いただけます①②③④ただいまー 遅くなっちゃった  あのね…「おかえり。遅かったね。お母さん、待ってたんだけど」と穏やかに。ご飯を食べながらでもいいので、これから子どもの話を聴く雰囲気を作りましょう。【2コマ目】「どうして遅くなったの。話してくれる?」と聞いてみましょう。もしかすると、親が望まない場所へ友達と行っていたと言うかもしれません。ここで、説教や評価はしないこと。さらに「どうして○○に行ったの?」と、あくまでも穏やかに聴いていくことです。【3コマ目】「友達に誘われたから…」「ストレス解消に行こうということになって…」と話し出すでしょう。子どもが安心感を持つと、自ら心を開いてくれます。「お母さんは、自分の気持ちを聴こうとしてくれているんだ」と、子どもに思わせるようにすることです。【4コマ目】「実はね…」と、そこで本当のことが出てくるかもしれません。それが大事です。子どもを叱るべきか、諭すべきかはここからです。もしかしたら、万引きしたことを話し出すかもしれません。子どもなりに悪いことをしたと分かっているもの。理由があっての行為かもしれません。冷静に「そう、万引きしたんだね。どういうことかお母さんに話してくれる?」と、しっかり話を聴いてみましょう。自分一人で不安を抱えていたはずです。「お母さんに話してよかった」と安心感を持たせることが、良い親子関係へとつながります。 子どもたちに配られる「チャイルドラインカード」。「ひろしまチャイルドライン」では、18歳までの子ども専用電話で、友達関係、いじめ、虐待、性の悩みなど、子どもたちのいろいろな声に寄り添い、ありのままに受け止め、子どもの心を解放し、自立を支えることを目的に活動しています。昨年は約70人のスタッフで、8118件の電話相談を受けましたチャイルドラインにかかってくる相談内容の一例◆「学校へ行きたくない」と親に相談したところ、「じゃ、行きたくなければ行かなくていい。お母さんは知らないから」と言われ、ほったらかしです(中学生の女子)上野「お母さんも一緒に考えるよ。どうしたらいいかね」とひと言かけるだけでも、その子は「お母さんの子でよかった」って思うもの。不登校の子どもの気持ちはいろいろです。寄り添ってしっかり時間を掛けて聞くこと。親が勝手に判断してはいけません。◆学校でいじめられていますが、親に相談できません(小学生の男子)。上野 親に心配をかけたくない、親を悲しませたくない、自分はどうしたらいいんだろうというような電話がかかってきます。「いつも良い子」と思われてることに負担を感じています。子どもにはとてもつらいことです。▲しっかり、子どもの話を聴いていますかイラスト:黒松晴美広島県教育委員会作成「〝親の力〞をまなびあう学習プログラム」の中から引用(教材番号18)。問い合わせは、広島県立生涯学習センタへ島県立生涯学習センターへどのような接し方がよかったのか、4コママンガを再現して考えてみましょうイラスト:黒松晴美

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