子育て親育ち リビングひろしま(電子新聞)広島で約20万部発行の地域生活情報紙
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〈15〉子育て親育ち『vol.14』(「リビングひろしま」2012年3月31日号9面掲載)山出普段、お子さんはどんな遊びをしていますか。草野テレビゲームやカードゲームなど、家の中での遊びが多いですね。環境的に、外で遊ぶのが難しい状況です。公園はあるのですが、ボール遊びは禁止なんです。田中今はどこもそうですよね。うちの子は、学校でサッカーとかドッジボールとか、いろんなバリエーションの鬼ごっこをしているようです。山出休みの日など、お父さんやお母さんと遊ぶ機会はありますか。草野うちは日曜日に親子一緒に、ウオーキングをしています。田中大きい公園に行って、父親と一緒にボール遊びをしています。山出いいことですね。外遊びのスタートは、やはり親子というのが理想的です。二人ともお子さんがラグビーをやっているそうですが、スポーツをやらせて良かったことはありますか。草野コーチの話がしっかり聞けるようになりました。いつもコーチから「自分だけのプレーをするな」と言われているので、回りが見れるようになりました。田中前よりは、協調性がついたと思います。相手をいたわる気持ちや、理解することもできるようになりました。山出兄弟やチームメートとケンカをすることがありますか。田中あります。よくもめてます。山出ケンカはあってもいいと思います。お互いの思いをぶつけ合うことで、仲良くなることってありますよね。スポーツは、運動能力を高めるだけではなく、人との接し方やコミュニケーションも身に付きます。草野実は、空手教室にも通っています。山出空手は、相手との間合いが大切で、駆け引きという意味では球技にもプラスです。テニスの錦織選手は、テニスだけではなく、小学校でサッカーをしていたと聞いています。小さい時にいろいろなスポーツを経験しておく方が、将来プラスになるんですよ。田中学校で体力テストがあり、評価を持って帰りました。良いのか悪いのか判断できません。草野うちも長距離走の結果をもらってきたのですが、何位というのはなくて、「何分何秒で最後まで走りました。おめでとう」って書いてありました。山出陸上だと、何メートルを何秒というタイムがありますが、球技には評価があまりありません。相手との駆け引きなど、数字で表せないことがたくさんあります。山出スポーツをしていて、どういう時にやる気を示しますか。田中うちの子は、あまりスポーツが得意ではありません。それを認めたうえで、「トライがたくさん取れるチームメートをサポートするのがあなたの役目よ」と説明したことがあります。その時はちょっと涙を流しましたが、その後すごくやる気になりました。草野しっかり興味を持ってプレーを見てあげるだけで、全然違うように思います。「あのプレーよかったね」と伝えると、「いつも見てくれてるんだ」と思うようです。私は素人ですから技術的なことは分からないですが、プレーを褒めてあげるだけで、やる気が全然違います。山出二人が言われたように、子どもをしっかり見て、認めてあげること。さらに、その団体の中で、居場所があることも大切です。サンフレッチェのスクールでやっているのは、まず来た時に、子どもとコーチと、必ず握手をしてあいさつをするんです。こうすることで、まずはコーチに認めてもらっているという、信頼関係を作ります。そして、なるべくその子の良いところを見つけて褒めてあげること。子どもなので、やろうとしたことが常に成功するわけではありません。だからこそ、やろうとしたことをまず褒めます。「今日はよく走っていたね」ぐらいでもいいんです。草野褒めすぎると図に乗らないかしら?山出「ここはダメだ、許せない」というところは、厳しく指導してもいいんです。それは、コーチとの信頼関係ができてから。コーチはちゃんと自分のことを見てくれているという信頼関係があれば、厳しいことを言っても聞き入れます。山出スキャモンの発育発達曲線(左上の囲み)で、神経型のところが運動に関する部分です。運動神経や音感は、10歳前後で100%備わります。ですから、この時期にいろいろなスポーツを経験したほうが、子どもにとっては、財産となります。もちろん早熟、晩熟という個人差があります。だからこそ、ゆっくり子どもを見守りましょう。つい、他の子どもと比べてしまいがちになりますが、比べるのなら過去との違いに注目しましょう。こうしたことを指導者や保護者が分かっていると、それに応じた声掛けやトレーニングができます。山出声掛けで、子どもの目の色が変わったことはありますか。草野「これ、ちょっと難しいけどできるかな」という言い方をすると、「僕できるよ。ほらできた!」という返事があります。田中とにかく「やってみなさい」と言います。やってみないと分からないことってたくさんあるし、失敗してもそれは恥ずかしいことじゃない。失敗をして段階を踏む方がいい経験ができます。山出日本は、ストライカーが育たないと言われます。シュートを外したとき、周りから「何やってんだ!」と言われるから。外そうとして蹴ってる子はいないし、空振りしようと思ってバットを振っている子もいない。やろうとしたことをまず認め、失敗したことに対してアドバイスしてあげるといいですよね。田中試合中に、「ああしろ、こうしろ」という声が保護者から出ます。それは子どもに聞こえているのでしょうか。山出聞こえてると思います。応援のために大きな声を出していただくのは全然問題ないと思います。ただそれが相手をけなしたり、わが子のプレッシャーになるようだと困ります。また、プレーに関わるようなことはコーチにお任せした方がいいでしょう。草野気を付けなきゃいけないですね。チームに迷惑をかけちゃいけないと思って、親もプレッシャーを感じて、ついついネガティブな言葉を発しちゃいます。山出そうですね。子どもには、年代に合ったサッカーというのがあります。ラグビーもそうだと思うんですが、失敗しても、ちょっと下手でもいいんです。大事なのはこの年代でスポーツをして、しっかり体を動かし、「またやりたいな。今度の練習はいつなの?」と思えることが一番です。編集部読者からの質問です。プロを目指すには、親としてどのようなサポートを心掛ければいいですか。山出「プロになりたい」という子どもの気持ちを大事にして、サポートしてあげればいいと思います。今、プロになっている選手が子どもころをみると、もちろんプレーは素晴らしいのですが、それ以外にも、学校での態度や勉強もしっかりしています。なぜなら、サッカーをしていない時間の方が長いので、その時間が安定していないと、良いプレーにつながらないからです。「子育て親育ち」座談会 【小学生編】サンフレッチェ流子どもへの接し方~スポーツ指導者に学ぶ~草野佳子さん(41歳、安芸郡)。長男9歳(小3)、ラグビーと空手に通います今回の「子育て親育ち」は、「サンフレッチェ流、子どもへの接し方」がテーマ。スポーツ指導者が、選手の能力を伸ばすために心掛けていることを例に、子どもにやる気を起こさせる接し方や、考えさせる言葉掛けなどについて考えます。小学生がいる2人のママと、サンフレッチェ広島スクールマスターの山出久男さんが話し合いました。(イラスト:黒松晴美)Vol.14田中真季さん(38歳、安芸郡)。長男8歳(小2)、次男5歳(幼稚園年中)、2人ともラグビーに夢中座談会の進行役を務める山出久男さん(54歳)。サンフレッチェ広島で普及部部長・スクールマスター。元小学校教諭で、現在はJFA公認A級コーチの資格を持って活躍中田中褒めてあげることが一番だと思いました。でも、なかなか声に出しにくく、子どもに伝わっていないですねまた、いろいろな場面で、「待つ」という余裕を持つことも、早速実践したいと思いました。草野比べるなら過去の自分と比べるということに共感しました。うちの子は成長が遅いほうなので、同級生と比べるとどうしても褒める部分が少なくなってしまうんです。1カ月前の姿、1年前の姿と比べて、褒めてあげるということは親としてできることなので、ぜひ実践したいと思いました。このたび実施した座談会は、3月14日にバルコムユーストリームスタジオ(西区大芝)の協力の下、ユーストリームを使って放映しました。ウェブサイト「LICOひろしま」内にある「子育て親育ち」のバナーをクリックすると、過去の座談会もご覧いただけますスキャモンの発育発達曲線外遊びや集団遊びが減っている今、遊びから培われるものをスポーツが担っている200%10000歳1020リンパ型神経型一般型生殖型 神経型は、生まれてから5歳ごろまでに80%の成長を遂げ、12歳でほぼ100%になります。神経型は、一度その経路が出来上がるとなかなか消えません。例えば、自転車に乗れるようになると、長期間乗らなくてもまた乗ることができることでも分かります。 子どもが成長していく過程で、器官や機能はまちまちに発達します。そのため、一つの課題に対して、吸収しやすい時期と、しにくい時期があり、もっとも吸収しやすい時期に、適切な課題を与えていくことが上達へのポイントとなります。【山出】 グリーンカードをご存じですか。ちょっときついファウルならイエローカード、もっと激しいファウルならレッドカードが審判から提示されます。それはすべてやってはいけないことばかり。 このグリーンカードは、よいことを行ったときに示すカードです。例えば、「ファウルになったけど、ごめんね」と相手の選手を起こしてあげたり、自分が出したボールを自分が取りに行って相手に渡してあげたりと、審判が見ていて、良いプレーだと感じたら、「よくやったね」とグリーンカードを出します。 これは家の中でも応用できます。「明日の準備が早くできたね」「今日は練習をがんばってたね」というとき、グリーンカードを出します。「こんなことで効果あるの?」と大人は思うかもしれませんが、嫌な気持ちになる子はまずいないでしょう。ぜひ使ってみてください。 JFA(日本サッカー協会)では、U12以下の試合で、グリーンカードの使用を奨励しています。フェアプレーにはグリーンカード座談会を終えて…子どもの発育発達には個人差あり比べるのであれば、過去と今とを…次回の「子育て親育ち」座談会は4月中旬実施の予定です テーマは、現在調整中です。座談会実施の1週間前にウェブサイト「LICOひろしま」の子育て親育ちコーナーに掲示します。乞うご期待ください!LICO 子育て親育ち検索 サッカーの試合で、チーム競技であるにもかかわらず、自分の子どもの一挙手一投足に必死の声援を送り続ける大人はたくさん見かけられます。それがこうじて、相手チームに罵声を飛ばし、勢いあまって味方の子どもにまで怒鳴ってしまう大人もいます。 サッカーは仲間がいなくてはできません。仲間と助け合うことこそ、サッカーの大きな特徴の一つです。それは、チームメートだけではありません。相手チームもそうですし、レフェリーもそうです。みんながそろって試合が成り立つのです。 私たちは相手チームを「敵」という言い方はせず、「相手」と呼びます。それはサッカーをするための大切な仲間だからです。自分の子どもばかりではなく、チームメート、そして、相手チームにも、良いプレーには拍手しましょう。サッカーに〝敵〟はいません(財)日本サッカー協会技術委員会発行「めざせ!ベストサポーター」より抜粋LICO 子育て親育ち検索子どもにとってやる気の原動力は信頼関係と〝認められること〞

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